★優秀な中国人スタッフ



僕が初めて駐在交代の為に香港まで行った時、迎えに来てくれたS先輩はやけに嬉しそうだった。

無理もない、快適なフィリピンからアイテム移管の為に、急に酷い環境の中国の僻地に行かなくてはならず、駐在期間もその為にかなり延びてしまったのだ。

この時、僕は初めて香港及び中国に訪れた、もちろん中国語なんて自慢じゃないが全く話せない。

これはUという会社の方針で、取り合えず行って気合いで何とかして来い、というのだ。

こういうパターンは何も僕が始めてではない。こんな事は気合いでなんとかなる物なのかどうか疑問に思うのが普通だが、何とかなってしまうので人間は凄い。

そうやって何とか無事中国の工場に辿り着いた。取り合えず生産技術部に入り中国人スタッフを紹介された。

S先輩はフィリピンに駐在していて当然英語しか話せず、それでも作業を効率よく進めるため、生産技術部内では優秀な英語の話せるスタッフを2人も付けて貰って居たのである。S先輩はその優秀なスタッフ2人を紹介した。

『えーっと、こいつが、あほー で、こいつが、ちんこ♪』

まじで吹き出しそうになった。初めて会う人達の前なので緊張していたがその緊張が一撃で吹っ飛んでしまった。S先輩はまじめに言っているのでぎゃぐでは無いらしい。

しかし、『あほー』と『ちんこ』とは・・・。もう少しなんとかならんのか・・・。

せめて、『たわけ!』と『ぱんつ』くらいにならんのか・・・あまり変わらないか。

喩えそんな名前でも、人の名前を笑うのはとても失礼だ。笑いたいのを必死に堪えながら、『Nice to see you.』と言って握手を交わす。

その後、スタッフ本人達によくよく名前を聞いてみると『あほー』の方は『ふう・よんちん(漢字は忘れた)』で、愛称に『阿(〜ちゃん、くん、みたいな意味)』を付けて、『あふー』と言うのが正しく、また『ちんこ』の方は『つんこい(フルネームは忘れた)』と発音するのが正しいようだ。

単にS先輩の発音が極端に悪かっただけであった。
あー、良かった、仕事中に、あほーだの、ちんこだのを連発しないで済みそうだと胸をなで下ろしていた。

つんこいはかなり英語で会話ができたが、あほー・・・失礼!あふーの方はちょっと中国語なまりが酷くて最初はアメリカ人の英語よりも聞き取れなかった。

自分自身も英語は酷い日本語訛りであるし、またそれほど英語が得意でなかったのを自覚していたが、彼はもっと酷かった。おまけに彼も単語をあまり知らず、よくスペルを書いてくれと言われた。

すると彼が英語→中国語の電子辞書で単語の意味を調べていた。また面倒な時は、取り合えず漢字を書いてみると、意味が通じる時もあった。

そうやって無事意志の疎通を図っていたのである。

また、つんこいは優等生タイプだが、あふーとはよく女性の話をしていた。中国語で映画の誘い方などを教わった。

『一緒行電影好不好(いちちーでぃぇんはぶはお)?が映画に一緒に行こうだよ』、と教わると、それを応用すると、一緒にホテルに行こうは、『一緒行酒店好不好?』だな?と確認を取る。『いや、最初からそれを言ってはいけない』などとくだらない会話で日中の親睦を深めた。

もちろん、今なお覚えているこれらの言葉は一度も使ってはいない。
(そんなはずは無いはずだ!by.吉田)

ちなみに、読み方は知らないが台湾に行くと、酒店(ホテル)は飯店に変わるのだ。

それなら、バーやレストランは何と言うのだというような突っ込みは僕にしないで欲しい。




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